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ミュシャ美術館(プラハ)に行ってきました。

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出張でチェコ共和国、プラハに来ました。 本当に美しい都です。カレル橋、ヴルタヴァ川、プラハ城、旧市街広場、天文時計、シナゴーグ…。 写真はカレル橋からプラハ城、聖ヴィート大聖堂です。 さてチェコの国民画家といえばやはりミュシャ。 という訳で空き時間にミュシャ美術館に行ってまいりました。 注)なおMuchaの本来のチェコ語での発音はムハとのことですが、本稿では日本で一般的なフランス語の発音に従いミュシャと表記いたします。 ミュシャ美術館はプラハの目抜き通り、ヴァーツラフ広場から一本入った静かな通りに面したビルの一階にあります。 1フロアのみ、小さな美術館ですが、お客さんはひっきりなしに訪れています。 本美術館の展示より。 ismonda 1894/95年 リトグラフ 有名な、ミュシャが一夜にしてスターダムにのし上がった出世作ですね。 チェコから花の都パリに出てきたものの、地味な仕事をこなしていたミュシャの作品が初めて多くの人々の目に触れた、いわばデビュー作ですが、のっけからのその完成度には驚くばかりです。 描かれた当時の大女優、サラ・ベルナールの気品のある姿、縦長の版型がもたらす伸びやかさと緊張感の絶妙なバランス、華やかなアール・ヌーヴォー様式の装飾…。 なお、残念ながら写真ではやや黒ずんでいますが、実際の作品はもう少し明るいです。しかし図版などで見るような鮮やかなオレンジ色という訳にはもはや…。100年以上の時の流れですね。 それでも実物を間近に観ることができて大満足です。 Medee 1898年 リトグラフ Gismondaのすぐ左隣に展示されています。ギリシャ神話の著名な登場人物、日本では通常メディアと呼びならわされていますね。 その強烈な視線、わが子を殺めた王女メディアの狂気がまざまざと迫るようです。 予め図版では観ていたものの、その迫力はやはり実際の作品ならではです。 ステンドグラス 聖ヴィート大聖堂 本作品はミュシャ美術館の展示ではなくて、プラハの象徴、プラハ城の一角にある聖ヴィート大聖堂のステンドグラスのひとつ、ミュシャの手によるものです。チェコに縁のある聖者が数多く描かれています。 ちなみにこの聖ヴィート大聖堂、元々はゴシック様式ではなかったとのことですが、中に入ると典型的な見事なゴシック大聖堂ですね。その驚くべき天井の高さ、垂直性、それを支える交差リ

出光美術館「生誕150年 板谷波山─時空を超えた新たなる陶芸の世界」展に行ってきました。

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出光美術館 で開催されている「生誕150年 板谷波山─時空を超えた新たなる陶芸の世界」展 を観に行ってきました。本展もずいぶん前から観に行こうと思いつつ、ようやく会期終了間近に行くことができました。 波山の作品を鑑賞するのは初めてでしたので、事前にかなり勉強して訪問しました。 出光美術館が入る国際ビル( 帝国劇場も入っています) 。 丸の内は高層ビルが本当に増えましたね…。 今回の企画展のポスター。出光美術館は8階です。 今回の展示から特に印象に残った三点。 葆光彩磁花卉文花瓶 昭和3年頃 気品のある器形、美しい花卉文、独特のマット釉が醸し出す色合いはまさに波山独自のものですね。 素晴らしい完成度だと感じました。 ポスターに掲載され(上写真)、また会場で全作品の第一番に展示されているのもわかる気がいたします。 彩磁延壽文花瓶 昭和11年 仙桃文のやや濃いピンク、葉の緑、背景の白と青海波の藍のコントラストが素晴らしいです。器形も見事です。 青磁鎬文鳳耳花瓶 昭和38年 展示の解説にある通り、南宋龍泉窯の砧青磁を彷彿とさせる作品ですが、胴部の鎬蓮弁文の彫りが 波山の独自性を際立たせています。 波山の青磁もまた素晴らしいですね。 19世紀末から20世紀前半という時代に、釉下彩、 葆光彩磁といった自ら切り拓いた 領域を含むこれだけの広い作風全てにおいて、これだけの非常に高い完成度の作品を、 一人の陶芸家が製作したとは本当に驚くばかりです( 轆轤は自ら挽かず専門家に任せたとのことですが。ただその割り切りも別な意味ですごいですね)。 本ブログでは毎回筆者の印象に残った作品を三点コメントしてきておりますが、今回は選ぶのがとても難しかったです(三点に拘る必要もないのですが…)。 陶芸を家業とする家に生まれたわけではない波山が、一方そうであるがゆえに従来の陶芸の世界では当然であった工房における分業制から脱して、(轆轤以外の)作品制作の全てにかかわった、という意味では近現代陶芸の嚆矢なのですね。 また改めて波山の独創性。 東京美術学校時代の専攻を活かした彫刻技法も用いて、 釉下彩による磁器、そして葆光彩磁といった 作品を創り出した独創性は驚くべきものと感じます。 そしてその作品の気品、峻厳な造形美は比類がないですね。 まさに不世出の陶芸家と実感しました。 恥ずかしながら今更初めて波山の

三川内焼の珈琲碗

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以前三川内に行った時に平戸松山窯で購入した珈琲碗です。 三川内といえば唐子。 優しく品のある絵柄と柔らかな呉須の青がお気に入りの一品です。

国立西洋美術館「自然と人のダイアローグ」展に行ってきました。

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国立西洋美術館リニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展を観に来ました。 数多くの美術館、博物館などが集まる上野でも、国立西洋美術館はJR上野駅公園口からすぐのロケーション、いつ来ても便利ですね。 今回の企画展のポスター。残念ながら今日は時間の関係で企画展のみ観ます。 本企画展は同美術館のHPによれば、国立西洋美術館リニューアルオープン記念として、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力を得て、急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけて、芸術家たちが新たな知識とまなざしをもって自然と向き合い生み出していった近代の芸術の展開をたどる展覧会、とのことです。 なお両美術館とも、19世紀後半から20世紀前半を生きた収集家(日本はもちろん松方幸次郎)の個人コレクションをもとに設立されたと解説されています。 今回の展示から印象に残った作品です。本展は多くの作品で撮影が可能になっていました。 「夕日の前に立つ女性」 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ 1918年頃 油彩、カンヴァス フォルクヴァング美術館 今回の企画展の目玉のひとつがドイツ・ロマン主義の旗手、フリードリヒですね。 絵の横に掲示された解説では、自然が秘める無限の力とこれを前にした人間の感動が伝わります、とされています。 後ろ向きの人物像と背景に広がる風景はフリードリヒの絵によく見られる構図ですね。私が保有している解説書によれば、本作品が製作された1918年はフリードリヒが結婚した年で、それ以降妻をモデルにした若い女性の後姿が頻繁に登場するようになったとされています。 フリードリヒの作品はこれひとつですが、この絵が企画展全体に大きなインパクトを与えているように感じました。 「陽を浴びるポプラ並木」 クロード・モネ 1891年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館 松方コレクション ジヴェルニーの家の近く、エプト川の岸で夏の日差しを浴びるポプラ並木、そして手前の水面に映り反射した景色が明るく実に鮮やかな色彩で描かれています。 多くのモネの作品が展示されており、最後の展示室に鎮座する「睡蓮」はもちろん素晴らしかったですし、他もいずれも印象的で感銘深かったのですが、個人的な好みは実際の風景と手前の水に映り実景と対をなす景色の組み合わせ。 これはかつて中学校か高校

すみだ北斎美術館「北斎 百鬼見参」展に行ってきました。

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今回は縁あってすみだ北斎美術館の企画展「北斎 百鬼見参」を観に来ました。 因みに私は浮世絵は今年から勉強し始めたばかりで全くの初学者です。 例により午後仕事を早めに終えて、JR線で両国駅に向かいます。 (因みに仕事はもちろんきっちりこなしています。今日は早朝時差出勤です。) 両国駅から東へ歩くこと10分足らず、総武線の線路の北側に接して、現代的な意匠の特徴的な建物です。開館は2016年と新しいですね。 今回の企画展のパンフレットです。 北斎の「鬼」とは意外なイメージですね。私もずっと北斎といえば富嶽三十六景だとばかり思っていましたが、浮世絵について勉強するうちに、実は北斎の画業の幅はものすごく広かったということを知りました。例えば版画の画題は花鳥、諸国の橋や滝、百人一首などに及んでいます。また浮世絵といえば錦絵、と思っていましたが、全然それだけじゃないんですね。 今回の「鬼」というテーマだけでもあれほどの多くのモチーフを、錦絵、肉筆画、挿画、手引書など実に幅広い形で作品にしていることを目の当たりにして、とにかく驚くばかりです。 本日の展示から印象的だった三点。 釈迦御一代記図会 三 八面九足の霊鬼悉達太子を試して四句の偈を授る図 葛飾北斎 大本 釈迦の一生を描いた読本の挿画。 鬼の具体的なイメージが実に鮮明に描き込まれています。その想像力と筆力、いずれもすごいですね。 摂州大物浦平家怨霊顕る図 葛飾北為 大判三枚続 やはり錦絵を一点。これは門人の葛飾北為の作ですが、とても印象的でした。 兄の源頼朝から謀反を疑われ、摂津大物浦から西国に落ちようと船を出す源義経主従。 嵐の闇を貫く雷光と、平知盛及びその郎党の怨霊の鬼気迫る姿が実に印象的です。 関西ご出身の方はお判りかと思いますが、大物は「だいもつ」ですね。 道成寺図 葛飾北斎 (本日の展示は高精細複製画、原画は紙本着色一幅) 主任学芸員の方の一押しです。 原画は今回の展示に向けて大がかりな修復を行ったとのこと。また能の場面を描いた北斎の肉筆画は他に例がないそうです。 鬼女の面の描写が妖しい迫力を持って迫ってきます。 鬼の絵で赤と白が基調というのも実に鮮やかです。 今回も北斎の驚くべき博識、想像力、そして筆力を改めて実感し、とても感銘を受けました。 またぜひ見に来たいと思います。 美術館前から。スカイツリーが近くて大きい

三井記念美術館「茶の湯の陶磁器 ~"景色"を愛でる~」展に行ってきました。

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この企画展は随分前から 1 日も早く見に行きたいと期待していました。 先週の繁忙から一転して仕事にゆとりのできた今週、フレックスタイムで会社を早退して銀座線で三越前駅に向かいます。 駅の直上に聳え立つ三井タワー、三井記念美術館は 7 階です。 ちなみに三菱グループの収蔵美術品も都心の美術館で展示することになりましたが、三井はその先駆けでしたね。 1 階から専用のエレベーターで 7 階に上がります。重厚な雰囲気に期待が高まります。 本日の展示から。 いずれも超の付く逸品かと思います。 志野茶碗 銘卯花墻 国宝 やはり本日一番の期待はこの品です。 また見に来ました。 アシンメトリックで伸びやかな、しかし堅牢かつ屹然とした造形。 強い赤、でもうるさくないし、あざとくないですね。 渋い鉄釉で描かれた絵、それが作り手が意図したものかどうかはわかりませんが絶妙の歌銘を与えられ、そしてそれを最小限の具象と見るならば、それは見る者に思考を解き放て、と語りかけているように感じます。 初めての絵の描ける白い焼き物にあの時代のみが託し得た躍動感を見るように感じます。 長次郎黒楽茶碗 銘俊寛 重要文化財 かつて新井薬師前の三井文庫でこの茶碗を初めて見た時、大きな衝撃を受けました。 初めて間近で真剣に見た楽茶碗がこの品でした。 これは一体何なのか。もちろんその時は全く消化しきれませんでした。 あれから随分時間が経ちました。 今なら少しは判るようになったと思いたいものです。 深遠さ、幽玄さ、そして見ているとまるで茶碗からお前は何者かと問いかけられているように感じます。 高台からの立ち上がりの造形が神秘的なくらいに絶妙と感じます。 居並ぶ楽茶碗の中でも、左入も良いなと思いましたが、やはりこの品が抜きんでているように思います。 粉引茶碗 三好粉引 重要文化財 やはり日本の焼き物が一番好きなのですが、それでも井戸、粉引といった朝鮮の茶碗にも強烈に惹かれるものがあるのは間違いありません。 一井戸とはよく言ったものだと思います。今日の第一展示室には井戸茶碗の名品もありましたが、この部屋で一番気に入ったのはこの品です。 用に徹するようなシンプルな器形と白い釉膚、広がる景色。大きさが器に力をもたらしているように感じます。 けれん味のなさのひとつの究極の姿のように感じます。 これら以外にも多くの逸品名品が目白

戸栗美術館「鍋島焼 ー200年の軌跡ー」展に行ってきました。

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